「広告を押したら、その会社のサイトが開く」。当たり前すぎて、考えたこともないと思う。ChatGPTでは、その当たり前が外れ始めた。
前回の記事では、AmazonがOpenAIのボットを店から締め出したまま、ChatGPTの広告を自分の広告主に売り始めた話を書いた。あれは答えの下に出る、いわば普通の広告だった。今日はその広告を押した先の話。押しても、サイトに行かない。
押したら、会話が始まる
9月14日のDigidayによると、OpenAIは一部の広告主に新しい形の広告を出し始めた。広告にブランド専用のAIエージェントをくっつけておく。利用者が「Chat to us」のようなボタンを押すと、開くのはブランドのサイトじゃない。ChatGPTの中にある、そのブランドの会話画面だ。そこでブランドのエージェントと話す。
Digidayは動画で実物を確認している。Wayfairが試しているのも、広告のスクリーンショットで見たという。何社が使えるのかは分からない。OpenAIはDigidayの問い合わせに答えていない。
今ChatGPTに出ている広告は、無料プランとGoプランの答えの下に並ぶ、見慣れた形のものだ。OpenAIのCFO、Sarah Friarは9月8日のGoldman Sachsのカンファレンスで、あれを「基本の出発点」と呼んだ。本当にAIらしい形の広告はまだ出してもいない、とも言っている。今回の広告は、OpenAIがAIらしい広告と呼んできたものの早い段階の形だ、とDigidayは書いている。
店員は、あなたのサイトを読んで作られる
実はこの広告、7月末に一度見つかっている。ChatGPTの広告管理画面に「Agent」というキャンペーンの種類が出ている、と起業家のJuozas Kaziukėnasが7月30日にLinkedInに書き、翌31日に報じられた(Search Engine Roundtable)。
彼の説明が面白い。まずOpenAIが、その会社のサイトを読み込んで、会社のプロフィールを作る。よくある質問、サポート情報、会社の大まかな中身。次に広告主が、指示を書いてエージェントを仕立てる。そのプロフィールに加えて、商品フィード、外のデータにつなぐMCPの道具、見込み客の連絡先を取るフォームまで持たせられる。最後に、サイトのURLではなくそのエージェントを行き先にした広告を出す。中身はCustom GPTsと同じ技術だという(Search Engine Land)。
ただし彼自身、この時点では実際に出ている広告は見ていない、と断っている。管理画面の仕組みを見ただけだ。そこから1カ月半で、Digidayが動いている実物を確かめた。
ここでちょっと笑ってしまった。前回の記事のAmazonは、ページを読みに来るOpenAIのボットを入れなかった。この広告は逆だ。自分のサイトを読ませて、その中身で店員を作ってもらう。そして客は、その店員とChatGPTの中で話す。サイトは客が来る場所から、店員の材料に変わる。
客をどこに立たせておくか
とはいえ、広告主がもろ手を挙げているわけじゃない。Digidayが声をかけた広告主の見立ては、いつ聞いても「有望、でもまだ早い」。予算も試しの枠を出ていない。Zeno GroupのShamsul Chowdhuryは、話題の新しい場所ではあったけど、投資に見合う成果はだいたいのところ出ていない、と言っている。
だからこそ新しい形を出した、とも読める。問題は、客をChatGPTの中に置いておくことが、ブランドにとって得かどうかだ。Chowdhuryの言い方がうまい。小売は自分のサイトで利用者のデータを取りたい。でも買い物の道のりはどこででも起きると分かっているから、その目線とお金を取りに行くしかない。
AccuracastのFarhad Divechaは、MetaがWhatsAppに客を送る広告と似ている、と言う。まず話せる窓口を開けて、サポートや営業につなぐべき人を選り分け、買う人は正しいページに送ればいい。
Digidayは最後にこう書いている。大きな広告の場所には、その時代を決めた形がある。Googleは検索を競りに変えたテキストの広告、Facebookはニュースフィードの広告、TikTokはフィードの中の動画。OpenAIが探しているのは、スクロールでも検索でもなく、会話に根ざした形だ。
私はこれ、筋がいいと思う。ChatGPTで何かを聞いている人は、もう話している最中だ。そこで「サイトへどうぞ」と外に出すより、そのまま話を続けてもらうほうが自然に決まってる。
数える道具のほうが、追いついていない
同じ週末に、この話を横から照らす一件があった。
Search Engine Journalが9月13日に書いたのは、Search ConsoleのAI検索レポートの話だ。6月に発表されて、8月31日に全世界で使えるようになった。AI OverviewsやAI Modeに自分のURLが何回出たかを見られる。
Redditで、ある人がその数え方を分解した。AI Overviewsに自分のリンクが載っていれば、利用者がそこまでスクロールしていなくても表示1回と数える。逆に「もっと見る」の奥にあるリンクは、開かれるまで数えない。順位も、リンク自身の位置じゃなく、AI Overviewsの枠が画面のどこにあったかが入る。
GoogleのJohn Muellerはこれに、ほぼその通りだと答えた。この手の表示で順位を役に立つ形で出すのは難しい。昔の1位から10位という考え方は、今の検索結果の画面に当てはめにくい。何を追えたら役に立つか、意見があれば聞きたい、と。
表示されたかどうか怪しい表示回数。どこにあったか分からない順位。そして押しても自分のサイトに来ないクリック。サイトの数字で自分の立ち位置を測るやり方が、両側から効かなくなってきている。
焦らなくていい。この広告はまだ一部の広告主の試験だ。ただ、自分のサイトの中身がそのまま誰かの店員の材料になるかもしれない、ということは頭に置いておくと後でラクだと思う。サイトに何を書いておくかは、客に見せるためだけのものじゃなくなる。
広告を押した人がサイトに来ない。その当たり前が、もう試され始めている。
参考・引用記事
- OpenAI's next ChatGPT ad format: click to chat, not to site(Digiday)
- ChatGPT Ads Business Agent Conversation Campaign Type(Search Engine Roundtable)
- OpenAI appears to be building chatbot-native ads that launch AI agents(Search Engine Land)
- Google Admits Search Console Reporting For AI Search Is Inadequate(Search Engine Journal)
