「Xの収益化、また条件が厳しくなっただけでしょ」そう思ってる? 厳しくはなった。でも面白いのはそこじゃない。これまでの報酬プログラムは9月7日で終わり、今日から移る先では、返信を数えない。返信欄に出る広告の分け前として始まった報酬なのに。
前回の記事では、人がそこにいることと、こっちに来ることは別だという話を書いた。今日のも似ている。数え方が変わると、書く人の手つきが変わる。
返信欄の広告で始めた報酬が、返信を数えなくなった
Xのクリエイター向け収益シェアは2023年に始まった。仕組みは単純で、あなたの投稿の返信欄に出た広告の売上を分ける。返信が伸びるほど、取り分が増えた。
2024年10月、Xはそこを切り離す。「返信欄の広告はもうあなたの支払いに影響しない。代わりに、Premium会員があなたのコンテンツにどう反応したかで払う」とX公式アカウントが告知した。TechCrunchはこのとき、こう書いている。プラットフォームが反応に報い始めると、クリエイターは議論さえ起きれば何でも投稿するようになる。読み手を怒らせて返信させるために作られた投稿も含めて。
2年経たないうちに、Xが同じことを言った。プログラムは「インセンティブが噛み合わなくなった地点に達していた」。クリエイターは「支払いを最大化することではなく、プラットフォームに新しいコンテンツを持ち込むことに集中すべきだ」。XのAllegra Jacchiaが、新プログラムを知らせる投稿にそう書いた(TechCrunchが引用している)。
旧プログラムは9月7日で終わった。そして今日9月8日から、旧メンバーが新しい「Original Content Rewards」への申請を順次できるようになる。旧プログラム分の最後の振り込みは9月11日ごろ。Xのヘルプセンターに日付まで書いてある。
新しい資格要件のうち、一番効くのは1行だ。過去90日で、認証済みユーザーからのホームタイムラインのインプレッションが50万以上。そのすぐ後ろに、括弧でこう付いている。返信へのインプレッションは除外。
旧プログラムの資格は「直近3か月でオーガニックインプレッション500万以上」だった。数字だけ見ると10分の1に緩んだように見えるけど、数える場所が違う。全部のインプレッションから、認証済みの人のホームタイムラインだけに絞り込まれている。返信欄は、その外だ。
「いいねしてね」が違反行為になった
新プログラムの継続条件に、こんな項目がある。エンゲージメントを求めないこと。いいね、返信、ブックマーク、フォロー、リポストを、ユーザーに繰り返し依頼する行為が名指しで並んでいる。違反すると通知が来て、程度によっては一時的か恒久的にプログラムから外れる。
3年前、返信を集めることに金を払っていたのは同じ会社だ。
Xはこの半年、パッチで直そうとしてはいた。4月には、タイムラインを埋めるクリックベイトとニュースの寄せ集めアカウントへの支払いを削っている。プロダクト責任者のNikita Bierによれば、そのサイクルで寄せ集め系は一律60%に減額、次のサイクルでさらに20%削る予定だった。全投稿の頭に「🚨BREAKING」を付ける常習者も対象。
その前の月にも手を入れようとしていた。3月、クリエイターの地元地域からのインプレッションを重く数える変更を発表して、2日後から適用すると告知した。狙いはアルゴリズム対策で米国や日本の読者を狙いにいく動きを抑えることだったけど、母国の利用者が少ない国のクリエイターから批判が集まった。イーロン・マスクは発表から数時間後、「さらに検討するまでは進めるのを止める」と返信している。適用される前に止まった。
止めて、削って、結局作り直した。認めるまでに2年近くかかったけど、認め方は潔い。
オリジナルは関門。金額を決めるのは、有料会員が半分見たかどうか
新プログラムが払う対象は「qualified impressions」、支払いの対象になるインプレッションだ。定義はヘルプに書いてある。X Premium(Basic / Premium / Premium+ / Premium Business)の購読者による、ホームタイムラインのフィード上での、重複を除いたインプレッション。ただし投稿の50%以上が画面に入っていること。同じアカウントの二重カウント、広告として配信されたもの、人工的に作られたもの、不正なものは数えない。
オリジナルの定義も細かく書いてある。丸ごとコピーはだめ。単語を1つ2つ差し替える、フィルターをかける、速度をいじる、文字を乗せる。この程度の手直しもだめ。他人の素材を集めただけの寄せ集めもだめ。一方で、他人のものに乗る形でも認めるものがある。コメンタリーはXの中心だ、とはっきり書いてある。ニュースを噛み砕く、起きている出来事に自分の見方を足す、他の人が持っていない文脈を足す。これはオリジナルに入る。
ここまで読むと、Xがやっと中身で払う気になったように見える。でももう一度、支払いの定義を見てほしい。オリジナルかどうかは、その投稿が数に入るかどうかの関門でしかない。実際にいくら振り込まれるかを決めるのは、Premium会員が何人、あなたの投稿を画面の半分に入れたか。審査員は人じゃない。金を払っている読者のスクロールだ。
筋は通っている。Premium+ にはほとんど広告が出ない。広告を見ない読者が増えるほど、広告の分け前は配れなくなる。Xがクリエイターに渡す金は、もう広告の売上じゃなくてサブスクの売上から出ている。だったら物差しがサブスク会員になるのは自然だ。自然だけど、「オリジナルなものを作れ」と言いながら手元にある目盛りが「有料会員が見たか」だけ、というのは、なかなかの構えだな。
Metaは8月の終わりに、除外を値引きに変えた
似た形が別の場所でも進んでいる。8月25日から、Metaの広告セットで配置の除外チェックボックスが消えたという報告が出始めた。代わりに使えるのはバリュールールで、入札を+1,000%から-90%まで動かせる。ある配置を高くつくようにはできるけど、絶対に出ないようにはできない。ppc.landの言い方を借りれば、除外が抑制に変わった。同じ記事によると、競合はこの1〜2年その逆に動いていて、Amazon DSPは2025年12月に除外カテゴリを足し、Microsoft Advertisingは2025年8月にドメインのブロックを1リスト1万件まで広げている。リストをつまみに変えているのはMetaだけだ。Metaからの公式発表はまだ出ていない。
YouTubeが再生回数の定義を変えた話を前に書いた。あれも骨格は同じで、何を1と数えるかを決めているのは向こう側だった。
私はこれを、Xが正気に戻った話だとは思わない。払う先を、広告主が見ていた場所から、金を払う読者が見ている場所に移しただけだ。目盛りはずっと向こうが持っていて、こっちは毎回それに合わせて書き方を変えている。3年前、返信を集めろと言われた。集めた人がいる。その返信は、今日から数えない。
参考・引用記事
- Original Content Rewards Program(X Help Center)
- Creator Revenue Sharing(X Help Center)
- X replaces 'misaligned' revenue sharing program with Original Content Rewards(TechCrunch)
- X changes creator payouts to depend on engagement, not ads(TechCrunch)
- X says it's reducing payments to clickbait accounts(TechCrunch)
- Elon Musk pauses changes to X's creator revenue sharing program after backlash(TechCrunch)
- Meta removes ad placement controls as bid cuts get capped at 90%(PPC Land)
