「値段を調べるならGoogle」。これ、まだ通用してると思う?
前回の記事は、裁判所がGoogleの広告オークションの中身に手を入れた話だった。最初に見て最後に決める権利を手放せ、と。あれは広告主とメディアの間の話。今日のは、もっと手前。あなたが「これいくら?」と打ち込んだ、その瞬間の話。
商品トラッキングのProductriseが9月1日にデータ調査を出した。8月9日から31日までの23日間、同じ検索語を通常の検索とAI Modeの両方に同じ日に投げて、返ってきた商品を全部記録する。200万件超の商品リスト、10万件超の結果ページ。対象は米国と英国。
結果はこうだった。同じ商品が両方に出たとき、AI Mode側の先頭価格は平均で21.6%高い。価格が食い違ったのはマッチした商品の38.1%で、そのうちAI Modeのほうが高かったのが68.4%。高いときの差は中央値で22.2%、逆に安いときは7.8%。上振れのほうが大きい。(Productrise / Search Engine Journal)
Googleの返事が、今日いちばんおいしい
9月2日、Googleが2文だけ答えている(Futurismの取材。Search Engine Journalもこれを引いている)。このレポートの主張の正確性は検証していないが、AI Modeも検索結果ページも、Google検索のショッピング結果はすべて同じデータソース、私たちのShopping Graphで動いている。買い物客は商品リスティングをクリックすれば、その商品の価格を小売業者間で見比べて、自分に一番いいものを選べる。
前半は反論になっていない。むしろ確認になっている。材料は同じ、倉庫はひとつ。なのに片方の棚からは100ドルが出てきて、もう片方からは149ドルが出てくる(こっちは全商品を並べた中央値の比較で、さっきの21.6%とは別の切り口。分けて読んでほしい)。データが同じだと言い切れば言い切るほど、差の置き場所は選び方のほうにしか残らなくなる。
本命は後半だ。そしてこれ自体は正しい。クリックすれば比べられる。ただ、比べられるのは画面に出てきたものの中だけ。その画面に何件出ているのか、というのが次の話になる。
Googleは値段を1円も上げていない。安さを一番上に置くのをやめただけ。この2つは矛盾しない。矛盾しないのに、画面に出る数字は変わる。
カルーセルで1位を取っても、AI Modeには届かない
もうひとつの数字のほうが、実務にはたぶん効く。
通常検索の商品カルーセルに出ていた商品のうち、同じ日・同じ検索でAI Modeにも出たのは1.28%。表示数も違う。カルーセルは1回に平均27.8件、AI Modeは3.9件。マッチした商品でも、先頭に立つ販売者が入れ替わっているのが49.6%。
Productriseは7月にも近い調査を出していて、そっちの数字はもっと極端だった。通常検索は約88%の検索で商品を返すのに、AI Modeが返すのは23%。1回あたりの件数の差と合わせると、同じ検索語でAI Modeが出す商品は約95%少ない(Productrise)。
棚が27.8から3.9に減って、しかも並ぶ顔ぶれがほぼ入れ替わる。カルーセル向けに整えてきたフィードは、片側にしか効いていない。SEOで積み上げたものが半分持ち越せない、という話ではなくて、そもそも別の売り場だったという話。
安さで勝ってきた店は、次に何を出すのか
Productriseの創業者Hugo Huijerの見立てはシンプルだ。データが示しているのは、AI Modeでは最も安い価格であることの重みが小さい、ということ。代わりに効いていそうなのは、フィードの質、商品データの濃さ、レビュー、そして買い物の会話との噛み合い。要は「安いか」から「ちゃんとしてるか」への配点の付け替えに見える。
だから受け止め方も割れている。Break The WebのKatelyn Gearyは厳しい。AI検索はタブを5枚開いて値段を見比べる面倒をなくすはずだったのに、標準で高い在庫しか出さないなら、手間はひとつも減っていない、と。JAKALAのJamie D'Alessandroは逆で、AI Modeは商品を少なく見せるだけでなく、より高いものを見せている、これは価格だけで戦いたくない小売にとって小さな勝利だ、と言う。同じ数字を見て評価が裏返るのは、この話が買う側と売る側のどちらに立つかで色が変わるからだ。
売上への効き方を具体的に言ったのはEEのTristan Jamesだった。市場によるが、購入判断でいちばん重要な要素に価格を挙げる消費者は3割から7割5分いる。だからこの食い違いは、両方の面でちゃんと成果を出している店であっても売上に直接効きうる、と。
一方、Re:signalのCallum Lockwoodは価格差より別のところを見ている。マッチした商品のほぼ半分で販売者が入れ替わっていること。そっちのほうが小売にとって心配すべきだ、という指摘だ。49.6%という数字は、たしかにそう読める。
冷静な留保もある。Brodie Clarkは、最後にクリックを取るのは結局いちばん安い店だと言う。表示された価格と、実際に払われた価格は別物。この調査が測ったのは前者だけだ。方法論にも非対称がある。通常検索側は人気商品のカルーセルだけを数え、AI Mode側は追跡できた商品カード全部を数えている。そしてJeff Collinsが言うとおり、これはGoogleがいまも活発に手を入れている売り場の、ある時点の断面でしかない。
今日の本音
数字の桁は動くと思う。でも方向は動かない。
値段を調べる場所としてのGoogleは、20年以上かけて「いちばん安いところに連れていってくれる機械」という信用を貯めた。AI Modeはその信用の上に立ちながら、選ぶ基準を静かに入れ替えている。値上げをしていないから誰も怒れないし、データは同じだから嘘もついていない。
売る側がいま決めるべきなのは、値札の下げ幅じゃない。3.9枠に選ばれる理由を、値段以外にどれだけ持っているか。それだけ。
参考・引用記事
- Google AI Mode shows the same products 21.6% more expensive than traditional search(Productrise、2026年9月1日)
- If AI Mode becomes the default, 95% of Google Shopping visibility disappears(Productrise、2026年7月29日)
- Google AI Mode Prices Differ From Product Carousel For Same Items(Search Engine Journal)
- AI Mode shows the same products 21.6% more expensive, Productrise finds(PPC Land)
- Google's AI Mode Is Ripping Shoppers Off With Vastly Higher Prices, Study Claims(Futurism、2026年9月2日)
