「GoogleのAI要約に文句があるなら、著作権で訴えればいい」。そう思ってる? 私も最初はそう思ってた。でも今、Googleを一番きわどいところまで押しているのは著作権の話じゃない。「よそは金を払ってる」の一言だ。
前回の記事で、Googleがパブリッシャーに配り始めた「優先ソース」ボタンの話を書いた。読者を囲えるように見えて、名簿はGoogleの手元に残る、という話。その同じ週に、ワシントンDCの法廷ではもっと素の話が進んでいた。
判事が「不公平に見える」と言った
今週の火曜日、Penske Media(Rolling Stone、Variety、Billboard、Deadlineの親会社)がGoogleを訴えている裁判で、訴え自体を却下するかどうかを決める審理があった。担当はAmit Mehta判事。2024年に、Googleの検索は違法な独占だと認定した、あの判事だ。
法廷にいたDigital Content NextのJason Kintの実況をSearch Engine Journalがまとめている。Mehta判事は、パブリッシャーは自分のコンテンツがどう使われるかを制御できないと指摘し、Googleの言う「製品改善」はパブリッシャーに負ぶさって成り立っている、と述べた。そのうえで、この状況は「まったく不公平に見える(all seems really unfair)」。さらに、製品改善だからといって独占禁止法の審査を免れるわけではない、とも。
Google側は、AI Overviewsは検索結果の見せ方を変えただけの正当な製品改善であり、これまでのクロールの慣行は「漠然とした過去の取引の経緯」にすぎない、という立て方をしている。
判事の言葉としてはかなり踏み込んでいる。ただし、却下するかどうかの判断はまだ出ていない。
出版社は著作権を選ばなかった
ここが今日いちばん面白いところ。
Penskeは著作権で訴えていない。独占禁止法で訴えている。しかも持ち出したのは「相互取引」という1960年代の古い理論だ。Columbia Journalism Reviewで、法学者のMailyn Fidlerはこれを、著作権の枠に事実がうまく収まらないときにその事実を扱うための、とても創造的なやり方だと評している。
理由ははっきりしている。AI Overviewsは元の記事の文章をそのまま持ってくるとは限らない。だから著作権侵害だと立証するのが難しい。じゃあ何が問題なのか。「検索に出たいなら、AIにも使わせろ」という蛇口が一本しかないことだ。PPC Landが伝えるPenskeの書面には、People Inc.の幹部の言葉が引かれている。Googleは検索用とAI用に同じクローラーを使っているから、止めれば検索からも消える。流入が減った状態でも検索はまだうちにとって効いている、と。だから止められない。
そこでPenskeが置いた一行がこれだ。OpenAIとPerplexityはコンテンツに金を払っている。Googleだけが検索の独占を使って、同じ材料をゼロで手に入れている。結果としてライバルの仕入れ値だけが上がる、と。
「盗んだかどうか」の話を「仕入れ値の話」に組み替えた。うまい。
5か月前、同じ判事が似た訴えを退けている
でも喜ぶのは早い。
今年の3月20日、同じMehta判事は、地方紙2社が起こした同種の訴えを5つの訴因すべて却下している(PPC Land)。アーカンソーのHelena World Chronicleと、ミシシッピのEmmerich Newspapers。2023年12月の提訴だった。理由はこう。出版社は一般検索サービスの市場にいるプレイヤーではないから訴える立場にない、市場の定義に失敗している、買収に関する訴えは時効、そしてAI Overviewsは検索に統合された機能であって別個の商品ではない。
最後のひとつが重い。「別の商品ではない」なら、抱き合わせの理屈は立たない。Googleの却下申立ても、まさに「2つの別々の商品など存在しない」と書いている(The Fashion Law)。ついでに、Penskeの訴状は教育サービス企業Cheggの訴訟の大部分を写したものだ、とも主張している。言い方がいちいち強い。
Penskeの訴状は、その弱点を先回りして書かれている。同じPPC Landは、Penskeが出版社を「検索市場でGoogleと競争している側」ではなく「Googleの製品に材料を納めている側」として位置づけ直した、と読んでいる。2025年9月に提訴し、12月には108ページの修正訴状を出した。火曜の法廷でMehtaが「よそは払っているのにGoogleはゼロ」に反応したのは、その置き換えが届いたということだ。ちなみにPenskeが引くGoogleの検索シェア89.2%、モバイル94.9%という数字は、Mehta判事が2024年の判決で自ら認定したものだ。自分の書いた数字を突きつけられる格好になる。
裁判は長い。待っている間にも数字は動く。Digidayが今日出した記事で、People Inc.はGoogleからの検索流入が前年比40%減ったと明かしている。セッションに紐づく収益は1年で61%から57%に下がり、代わりにセッションに紐づかない収益が16%伸びて、デジタル収益全体の43%を占めるまでになった。最高革新責任者のJon Robertsいわく、成長したいならオープンウェブの会社である以上の何かになる必要がある。判決を待って蛇口が直るのを期待する会社と、蛇口の外に配管を引き始めた会社。差がつくのは後者だと思う。
Penskeが勝つかどうかは分からない。私は正直、五分より下だと見ている。同じ判事が5か月前に似た訴えを退けているし、審理での判事の一言は判決ではない。
それでも、この裁判がもう残したものがある。「AIに使わせたくないなら検索からも消えろ」という一本きりの蛇口が、業界の愚痴ではなく法廷の争点になった。そこまで来たなら、変わるときは一気に変わる。
参考・引用記事
- Judge In Penske Vs Google Says AI Situation "Seems Really Unfair"(Search Engine Journal)
- The Creative Approach Behind Penske's AI Lawsuit(Columbia Journalism Review)
- Penske Media says Google's 'forced choice' broke longstanding web bargain(PPC Land)
- Judge dismisses newspaper publishers' antitrust case against Google(PPC Land)
- Google Says AI Overviews Aren't Anticompetitive in Bid to Dismiss PMC Suit(The Fashion Law)
- Media Briefing: The post-traffic era of the open web is taking shape(Digiday)
