「ネットの記事、もうほとんどAIが書いてるんでしょ?」そう思ってる? 半分だけ当たってる。
前回の記事では、AI企業が世論に嫌われ始めた話を書いた。今日はもっと手前の話をする。そもそも今ネットに並んでいる文章のうち、どれくらいをAIが書いているのか。Pew Research Centerが、それを実際に数えた(How Much of the Internet Is Written With AI?)。8月20日に出たばかりの調査だ。
やり方が力技で面白い。Common Crawlという、2008年からウェブを大規模に集め続けている非営利のアーカイブがある。そこから英語のページを約49万件引っ張り出した。2021年1月から2026年7月まで、49回分のクロールから毎回1万ページずつ。それをPangramのAI検出モデルにかけて、「AIが書いた、または大幅に手を入れた」痕跡が出るページを数えた。
結果は、2026年7月時点のサンプル全体で10%。10ページに1ページだ。
「思ったより少ないな」と思った? 私も最初はそう思った。でもこの10%には仕掛けがある。ウェブには過去のページが積み上がったまま残っている。2016年の個人ブログも2009年の会社案内も、同じ1ページとして数えられる。AIが存在しなかった時代の在庫が、分母を膨らませている。
そこでPewは、HTMLの中に公開日が書いてあるページだけを取り出して、ChatGPTが出た2022年11月より後のものに絞った。すると3分の1を超えた。
ここは正直に書いておく。公開日がHTMLに入っているページは、クロールしたうちの10〜15%しかない。3分の1というのは、ウェブ全体ではなく「日付を名乗っているページ」の中の話だ。それでも向きは変わらない。新しく作られる層だけが、明らかに違う色に染まっている。
.comにだけ湧いている
ドメイン別に割ると、絵がはっきりする。
.comは約10%。.orgは4.6%。.eduと.govは約1%。.comは大学と役所の10倍だ。
理由は単純だと思う。量を出す動機があるかどうか。検索で拾われれば金になるページを、できるだけ多く並べたい人が.comにいる。大学のシラバスと役所の告知は、100本に増やしても誰も得しない。AIの文章は技術のあるところに湧くんじゃなくて、量が金になるところに湧く。
しかも増え方が急だ。.comの痕跡は2021年1月に1.09%だった。それが2026年1月には9.35%(Pew Research Center)。5年で8.5倍。
見分け方が、句読点の癖だった
ここが一番面白かった。Pewは検出モデルの判定だけでなく、文章そのものの癖も数えている。2023年1月と2026年1月を比べると、こうなる。
エムダッシュ(長いダッシュ)の出現頻度が約2倍。オックスフォードカンマが63%増。AIが好んで使う語彙が2倍超。そして「ネガティブ平行法」、つまり「Xだけじゃなく、Yだ」の形が3倍近く。
白状すると、私が守っているルールの中に「長いダッシュは使わない」という一行がある。理由はまさにこれだ。あの記号にAIっぽさが一番出る。おかげでこの記事は、長いダッシュの話をしているのに長いダッシュを打てない。書きにくいったらない。
もっと具合が悪いのは、そのすぐ下の「Xだけじゃなく、Yだ」のほうだ。私はこの構文を平気で使う。この記事でも、もう何度か使っている。3倍に増えたやつだ。癖は自覚しても抜けない。
念のため、Pew自身が釘を刺している。長いダッシュを打った文章がAI製だとは言えない。一本一本は何の証拠にもならなくて、何十万本も集めて統計で見たときに初めて模様が浮かぶ、という話だ。増えたと言っても全体で見ればまだ珍しい部類だ、とも書いてある。人が書いた文章をAI製と誤って判定することもある、と手法の説明にはっきり断ってもいる。
同じ日、Googleは読者に指名させ始めた
面白いことに、Pewの調査が出たのと同じ8月20日、Googleが別の発表をしている。サイトの運営者が自分のページに埋め込める「Preferred Sources」ボタンを配った(Google)。読者がそれを押すと、その発信元がGoogle検索やDiscover、Googleニュースで優先的に出るようになる。押した読者は、そのまま読んでいたページに戻される。
Googleの言い分は「見るものを自分で選べるように」だ。ただ、私はもう少し身も蓋もない読み方をしている。ウェブに並ぶ文章が自動で増え続けるなら、機械の側だけで「これは読む価値がある」を選り分けるのは、だんだん割に合わなくなる。だったら読者に名指しさせたほうが早い。AI検索でパブリッシャーの流入が減った穴埋め、という説明よりも、こっちのほうが腑に落ちる。
AIが書いたかどうかを当てるゲームは、たぶん長くは続かない。検出は確率でしか答えられないし、癖は直せるし、真似もできる。最後に残るのは「誰が名前を出して、これを世に出したか」だけだと思う。だからこの記事にも、私の名前が付いている。
参考・引用記事
- How Much of the Internet Is Written With AI? - Pew Research Center
- Methodology - Pew Research Center
- A third of web pages published since ChatGPT's launch show signs of AI authorship, study finds - TechCrunch
- Personalize what you see on Google Search, News, Discover - Google
- Google gives publishers a new way to fight AI-driven traffic losses - TechCrunch
