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Moment of Truth(真実の瞬間)

「Moment of Truth(真実の瞬間)」は、お客様が製品やサービスとの接点を通じて、ブランドへの印象や評価を決める重要な瞬間のこと。マーケティングや顧客体験(CX)の分野で使われる概念で、この瞬間をうまく管理できると、顧客満足やブランドへの信頼につながる。

もともとは2005年頃、P&G(当時のCEOはA.G. Lafley氏)が「店頭で商品を手に取る最初の数秒が勝負」としてFMOT(First Moment of Truth)を打ち出したのが広まりのきっかけ。その後2011年に、Googleが「買う前にネットで調べる瞬間こそ最初の勝負」としてZMOT(Zero Moment of Truth)を提唱し、今の4つの瞬間で語られる形になった。

4つの瞬間

Zero Moment of Truth(ZMOT):買う前に調べる瞬間 検索する、口コミを見る、SNSで評判を探す。お客様が製品に出会う前の情報収集の段階。

First Moment of Truth(FMOT):買う瞬間 店頭やサイトで製品を初めて見て、買うかどうかを決める段階。

Second Moment of Truth(SMOT):使う瞬間 実際に製品を使ってみて、期待通りだったかを体験する段階。

Third Moment of Truth(TMOT):誰かに話す瞬間 体験をレビューやSNSで共有する段階。ここでの発信が、次のお客様のZMOTになる。

チェックすべき16の問い

各瞬間で、解決すべき問いに答えるかたちで検討する。定期的にチェックして改善策を検討・実行することで、顧客体験の向上につながる。

ZMOT:買う前に調べる瞬間

FMOT:買う瞬間

SMOT:使う瞬間

TMOT:誰かに話す瞬間

ここまでが概念の説明。ここからは、この16個を実際の支援の現場でどう使っているかを書く。

チェックリストとしては使わない

正直に言うと、16個を順番に全部チェックしたことは一度もない。

やっているのは逆で、お客様の話を聞きながら「今どの瞬間の話をしているんだろう」と頭の中で場所を確認する使い方。地図として持っておいて、迷子にならないために見る。そういう道具だという気がする。

たとえば「問い合わせが減った」という相談。話を聞くと、広告もサイトも変えていない。変わったのは口コミだった。半年前についた低評価レビューに返信をしていなくて、それが検索結果に出続けていた。

これはZMOTの問題。でも本人たちはFMOT(サイトや広告)を疑って、リニューアルの見積もりまで取っていた。地図があると、「直す場所、そこじゃないかもしれません」が言える。

効いた問いは、だいたい地味

16個のうち、実際にお客様の顔つきが変わったものは数えるほどしかない。しかもそれは、こういう地味なやつだった。

「使用中に困ったとき、サポートは適切に提供されているか?」

ある会社で、解約理由の上位が「使い方がわからなかった」だった。製品は悪くない。届いてから最初に触る日のフォローが何もなかった。買った瞬間までは全力で、買った後は放置。SMOTが丸ごと空いていた。

「ネガティブなフィードバックがあったときに、迅速に対応できているか?」

さっきのレビューの話。悪い口コミを消すことはできないけど、返信は今日できる。返信がある店とない店、どちらを選ぶかは自分がお客の立場になれば分かる。

派手な問いより、当たり前すぎて誰も見ていない場所を指す問いのほうが効く。そういうものかもしれない。

調べる場所が増えた

ここ数年で明確に変わったのはZMOT。

以前は「検索したときに見つかるか」「レビューはどうか」を見ればよかった。今はそこにAIが加わった。ChatGPTやClaudeに「◯◯ おすすめ」と聞く人が普通にいて、そこで名前が出るかどうかも、お客様が最初に触れる瞬間になっている。

検索がAIに置き換わったとは思っていない。調べる場所が一つ増えた。ZMOTの範囲が広がっただけで、「お客様はどこで情報を探しているのか」という問い自体は前から変わらず使える。問いが変わらないのに答えが変わる。概念が生きている証拠だと思う。

自分はコンセプトダイアグラムと組み合わせている

Moment of Truthはカスタマージャーニーと合わせて語られることが多い。ジャーニーマップ自体は良いツールで、否定するつもりはない。ただ、自分のやり方には少し合わなかった。

ジャーニーマップは、認知から購入までを一本道で描く。でも実際のお客様は、行って、戻って、しばらく忘れて、また来る。一本道の絵にすると、その「戻る」や「忘れる」が地図から消える。描いた瞬間は納得感があるのに、実務で使おうとすると現実とずれてくる。そういう経験を何度かした。

だから今は、コンセプトダイアグラムを使っている。お客様の心理段階と、サイトのコンテンツ配置を重ねた図。順番を描かない代わりに、「この段階の人には、この場所に、これがある」という対応だけを描く。

これがMoment of Truthと相性がいい。4つの瞬間のどこでつまずいているか見当をつけたら、ダイアグラム上で「その瞬間を支えるコンテンツはどこにあるか。そもそもあるか」を確認できる。空白が見つかれば、そこが打ち手になる。

図は、どの瞬間を疑うかを決めるためにある。決めたら、その瞬間に絞って問いを立てて、直して、また様子を見る。この繰り返しのほうが、全体を網羅した美しい資料より役に立つと思う。

16個の問いを暗記する必要はない。持って帰るのは一問だけでいい。「お客様が今、うちのどの瞬間でつまずいているか」。これで十分だと思う。

Seventy Seventy株式会社 代表取締役 大角誠之

大角誠之
Seventy Seventy株式会社 代表取締役

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